インスタグラムを見ていたら、金貨の広告が流れてきたことがあります。
「田中貴金属」の名前が入った純金メイプルリーフ金貨が、1万円台で売られていました。
その場では「安すぎるし怪しいな」で流しましたが、正直、値段だけ見たら一瞬迷う人は多いと思います。
消費者庁が2026年9月3日、まさにこの手の広告について注意喚起を出しました。
田中貴金属工業やミキモトの名前を無断で使った偽サイトで、実際に商品を買った人のところに届いたのは、金でも真珠でもない別物だったという話です。
今回は、何が起きていたのか、いくらの被害が出ているのか、どこを見れば偽サイトだと分かるのかを整理します。
「純金」の中身は銅と鉄でした
消費者庁が問題にしたのは、田中貴金属工業とミキモトという、貴金属・真珠の専門店として誰もが名前を知っている2社をかたった偽サイトです。
広告に出ていたのは、「田中貴金属 メイプルリーフ金貨 24K純金」が15,000円、「ミキモト 真珠ネックレス」が14,800円という価格でした。
メイプルリーフ金貨は1オンス(約31.1グラム)が基本サイズです。田中貴金属が公表している2026年9月3日時点の金価格は1グラムあたり24,820円なので、地金の価値だけでも31.1グラム×24,820円で約77万円になります。硬貨としての加工費やプレミアムを足せば、実勢価格はさらに上です。
それが広告では15,000円。本物の価格の50分の1以下です。数字にして比べると、どれだけ非現実的な値段か一目で分かります。
それでも「残り11個」「本日限り解禁」といった煽り文句が添えられていると、判断が鈍む人が出てくるのだと思います。
実際に注文した人のもとには、海外から約10日かけて商品が届きました。
受け取った人からは「磁石にくっついた」「おもちゃみたいに軽い」という声が相次ぎ、消費者庁が検査機関に依頼して中身を調べたところ、金貨の成分は銅が7割・鉄が2割。ネックレスは本物の真珠ではなく、模造品でした。
だから、記事タイトルにも書いた「届いたのは銅と鉄でした」という話になります。
被害の数字:相談239件、支払い済み47件、約106万円
消費者庁の発表によると、この偽サイトに関する相談は2025年10月から2026年7月までの間に239件寄せられています。
このうち47件が実際に代金を支払っており、被害額は合計で約106万円にのぼります。
1件あたりに直すと2万円台前半で、金額としては大きくありません。
ただ、これは「1回の被害額が小さいから深刻ではない」という話ではありません。
むしろ、金額が小さいからこそ「まあ、だまされてもこのくらいなら」と気が緩みやすく、広告を踏む人が減らないという面があると僕は思っています。
しかも使われていたドメインは「dccvd.com」「dcvfert.top」「mzisoe.top」と、田中貴金属やミキモトとは何の関係もない文字列です。SNS広告さえ出せば、URLがどれだけ不自然でも一定数の人が反応するということです。
見分け方は消費者庁がすでに教えてくれている
今回、消費者庁は偽サイトの特徴として、次のようなポイントを挙げています。
正規品と比べて極端に安いこと。
支払い方法が代引きだけなど、限定されていること。
サイトに使われているドメインが国外のものであること。
事業者名・住所・電話番号がはっきり書かれていない、または実在しないこと。
日本語の表現がどこか不自然であること。
今回の偽サイトも、この条件にほぼそのまま当てはまっていました。
つまり、判断基準そのものは目新しくありません。難しいのは、広告を見た瞬間にこの基準を思い出せるかどうかです。
「安い」「残りわずか」「今日だけ」という言葉が並ぶと、人はどうしても急かされます。急いでいるときほど、支払い方法やドメインをじっくり確認する余裕はなくなります。
だから、この記事を読んだ今のうちに「代引きしか選べない通販は疑う」「聞いたことのある店名でも、広告のリンクからではなく検索し直す」の2つだけでも覚えておいてもらえたらと思います。
広告リンクを踏む前に、公式サイトを検索し直す
具体的にできることは、そんなに難しくありません。
田中貴金属やミキモトのような、名前を知っているブランドの広告が流れてきたら、その広告のリンクは踏まずに、ブラウザで「田中貴金属 公式」のように検索し直してください。
公式サイトに同じキャンペーンや同じ価格の情報が出ていなければ、その広告は疑ってかかったほうがいいです。
支払い方法が代引きしか選べない時点でも、一度立ち止まる価値があります。正規の通販サイトは、クレジットカードや銀行振込など複数の支払い手段を用意しているのが普通だからです。
すでに商品を注文してしまった、あるいは代引きで代金を払ってしまったという場合は、消費者ホットライン「188(いやや!)」に電話すれば、最寄りの消費生活センターにつながります。
クレジットカードで支払っていた場合は、カード会社に「チャージバック(支払い済み代金の取消請求)」の制度がないか問い合わせるのも一つの手です。今回のような代引き被害では使えませんが、次に似た手口に遭ったときのために覚えておいて損はありません。
代引きだからこそ、支払った後は取り戻しにくい
今回の偽サイトが代引き払いだけを用意していたのは、偶然ではないと思います。
クレジットカード払いなら、後からカード会社に「チャージバック(支払い済み代金の取消請求)」を申請できる可能性があります。実際に商品が届かない、または説明と著しく違う物が届いた場合、カード会社の判断で代金が戻ってくることがあります。
でも代引きは、商品と引き換えにその場で現金を渡す仕組みなので、いったん支払ってしまうと取り戻す手段が一気に減ります。相手は海外から発送しているため、返品交渉すら難しいのが実情です。
だからこそ、代引きしか選べない通販サイトを見た時点で、いったん立ち止まる価値があります。正規の通販サイトが代引き「だけ」を用意することは、まずありません。
広告そのものを見かけたら、通報もできる
自分は買わなかったとしても、広告そのものを見かけたら通報しておくと、同じ広告が他の人の目に触れる回数を減らせます。
Instagram・Facebookの広告右上にある「…」(点3つ)のメニューから「広告を報告」を選び、「詐欺または詐欺行為」を選択すれば通報できます。
田中貴金属工業やミキモトのような大手企業側も、こうした偽サイトに対して注意喚起や法的対応を進めているはずですが、広告の出稿元を完全に止めるのは簡単ではありません。見かけた人がその都度通報していくことも、被害を減らす一つの手段だと思います。
似たような偽サイトはこれまでも報告されている
こうした偽通販サイトの手口自体は、今回が初めてではありません。
以前この記事でも紹介した「欠品なので返金します」の偽通販サイトは、限定品を格安で売るふりをして、支払い後に「返金手続き」を口実にスマホの遠隔操作まで求めるという、もう一段階踏み込んだ手口でした。今回の田中貴金属・ミキモトのケースは、そこまでの遠隔操作要求はなく、単純に偽物が届くだけという点で、実害の性質が少し違います。
広告の出し方も共通点があります。今回もInstagram・Facebookでの広告出稿でしたが、Amazonをかたるフィッシングメールや、著名人になりすました投資詐欺広告も、いずれも「知っている名前」を借りて信じ込ませる点は同じです。
名前を借りられる側からすると迷惑な話ですが、借りられているのが企業か個人かの違いだけで、手口の骨組みはよく似ています。だからこそ、一つの手口を覚えておくと、応用が利きます。
この記事が向かない人
正直に書いておくと、SNSの広告をほとんど見ない人や、貴金属・宝飾品を通販で買う習慣がない人には、あまり関係のない話です。
すでに正規の実店舗やブランドの公式通販サイトだけで買い物をすると決めている人にも、今さらの内容だと思います。
逆に、SNSで流れてくる広告をつい見てしまう人、実家の親御さんがネット通販を使い始めたばかりという人には、知っておいて損はない話です。
まとめ
消費者庁が2026年9月3日に公表したのは、田中貴金属工業とミキモトの名前を無断で使った偽サイトの話でした。
15,000円の「純金金貨」の中身は銅7割・鉄2割。14,800円の「真珠ネックレス」は模造品。相談は239件、支払い済みは47件、被害額は合計約106万円です。
見分け方は目新しいものではありません。極端に安い、代引きしか選べない、ドメインが不自然、日本語がどこかおかしい。この条件がそろったら、その場で買わずに公式サイトを検索し直す。それだけで、かなりの被害を防げます。
僕自身、あのメイプルリーフ金貨の広告を見たとき「安すぎるな」で終わらせましたが、忙しいときに見ていたらどうだったか、正直分かりません。だからこそ、こうして一度言葉にして覚えておこうと思いました。
本記事は、消費者庁の公表情報および報道をもとに、会社員が個人の立場で執筆しています。特定商品・特定企業への非難を目的とするものではなく、正規の田中貴金属工業・ミキモトとは無関係の第三者による偽サイトについての注意喚起です。制度や統計は今後変わる可能性があるため、最新情報は消費者庁の公式サイトでご確認ください。詐欺被害に遭った、または遭いそうな場合は、消費者ホットライン「188」にご相談ください。