毎年7月になると、ニュースで「路線価公表」という言葉が流れます。銀座の1等地が1㎡で何千万円、みたいな話題です。正直、以前の私は「うちには関係ない世界やな」と聞き流していました。
でも、親の実家の相続をぼんやり考え始めたとき、気づいたんです。路線価は「うちの実家に相続税がかかるかどうか」を自分で確かめられる、無料の公式データやということに。実際に調べてみたら10分ほどでざっくりの答えが出て、「もっと早よ見とけばよかった」と思いました。
この記事では、路線価の基本と、自宅・実家の相続税を自分でざっくり試算する手順を解説します(2026年7月現在の制度に基づきます)。
路線価とは:相続税・贈与税のための「土地の公式価格」
路線価は、道路(路線)に面する土地1㎡あたりの評価額です。国税庁が毎年7月上旬に公表し、その年の1月1日時点の価格として、相続税と贈与税の土地評価に使われます。
土地の「値段」にはいくつか種類があります。
- 実勢価格:実際に売買される価格
- 公示地価:国土交通省が毎年3月に公表する基準の価格
- 路線価:相続税・贈与税用。公示地価の8割程度の水準に設定
- 固定資産税評価額:固定資産税用。公示地価の7割程度
ポイントは、路線価が実勢価格より低めに設定されていることです。つまり「売ったら5,000万円の土地」でも、相続税の計算上は4,000万円前後で評価されることが多い。相続税の世界では、現金より土地のほうが評価が下がる——これが土地が相続対策に使われる理由でもあります。
なお、路線価が定められていない地域(郊外や地方の一部)は、倍率方式(固定資産税評価額×地域ごとの倍率)で評価します。これも同じ国税庁のサイトで確認できます。
路線価図の見方:数字とアルファベットの意味
路線価は国税庁の「路線価図・評価倍率表」サイトで誰でも無料で見られます。「路線価図」で検索して、都道府県→市区町村→地図とたどるだけです。
地図を開くと、道路に「300C」のような数字+アルファベットが書いてあります。
- 数字=1㎡あたりの路線価(千円単位)。「300」なら30万円/㎡
- アルファベット=借地権割合。A(90%)からG(30%)まであり、借地・貸地の評価で使う記号です。自分の土地に自分の家が建っている場合は無視してOK
つまり、実家の前の道路に「135D」とあれば、その土地は1㎡あたり13万5,000円で評価される、ということです。
10分でできる:実家の相続税ざっくり試算
手順は3ステップです。電卓があればできます。
ステップ1:土地の評価額を出す
路線価 × 土地の面積 で概算します。
例:路線価30万円/㎡ × 150㎡ = 4,500万円
土地の面積は、固定資産税の課税明細書(毎年4〜6月に届くやつ)か、登記簿で確認できます。実際の評価では奥行きや形による補正(奥行価格補正率など)が入りますが、ざっくり試算なら「路線価×面積」で十分です。補正はたいてい評価を下げる方向に働くので、この概算は「多め」に出ると思っておけば安全です。
ステップ2:小規模宅地等の特例で8割引きできるか確認
ここが最大のポイントです。亡くなった人が住んでいた自宅の敷地は、330㎡まで評価額が80%減額される特例があります(小規模宅地等の特例・特定居住用宅地等)。
主な適用条件は次のいずれかです。
- 配偶者が相続する(同居してなくてもOK)
- 同居していた親族が相続し、住み続ける
- 配偶者も同居親族もいない場合、3年以上借家住まいの別居親族(いわゆる「家なき子」)が相続する
先ほどの例だと、4,500万円 ×(1−0.8)= 900万円。特例が使えるかどうかで、土地の評価が4,500万円か900万円か、まるっきり変わります。逆に、持ち家のある子が別居のまま相続すると特例は使えないことが多い。ここは事前に知っとうかどうかで大きな差が出るところです。
なお、この特例を使うには相続税の申告書を出すことが条件です。「特例を使えば税額ゼロ」の場合でも申告は必要なので注意してください。
ステップ3:基礎控除と比べる
相続税には基礎控除があります。
基礎控除 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
- 相続人が1人 → 3,600万円
- 相続人が2人(母+子1人など)→ 4,200万円
- 相続人が3人 → 4,800万円
「土地の評価額+建物(固定資産税評価額)+預貯金・株など」の合計が基礎控除以下なら、相続税はかかりません(申告も原則不要。ただし特例を使って以下になる場合は申告が要ります)。
例:土地900万円(特例適用後)+建物500万円+預貯金2,000万円 = 3,400万円。相続人2人なら基礎控除4,200万円以下なので、相続税はゼロ——という具合です。
マンションの人は要注意:2024年から評価ルールが変わった
マンションの相続税評価は、従来「市場価格よりかなり低く出る」ことで知られていました(いわゆるタワマン節税の温床です)。これを踏まえて、2024年1月以降の相続・贈与から、マンションの評価額が市場価格の6割水準に満たない場合は、6割まで引き上げる新ルールが適用されています。
築年数・階数などから「評価乖離率」を計算する仕組みで、特にタワーマンションの高層階は以前より評価額が大きく上がりました。「昔ネットで調べた評価額」のままで考えていると、今は前提が変わっている可能性があります。
路線価は贈与でも使う
路線価の出番は相続だけではありません。生前贈与で土地や土地の持分を渡すときの贈与税評価も路線価ベースです。2024年の贈与税改正(暦年贈与の持ち戻し7年化・相続時精算課税の110万円控除)とあわせて考えると、土地をどう渡すかの選択肢は以前より広がっています。詳しくは贈与税の2024年改正の記事にまとめています。
まとめ:7月は「実家の値段」を見るのにちょうどいい
- 路線価は相続税・贈与税用の土地の公式価格。毎年7月に更新され、無料で見られる
- ざっくり試算は「路線価×面積」→「自宅なら330㎡まで8割引きの特例」→「基礎控除3,000万円+600万円×人数と比較」の3ステップ
- 特例が使えるかどうかで結果が激変する。誰が相続するかが実は一番効く
- マンションは2024年から評価ルール変更。古い知識は更新を
私自身、試算してみて「基礎控除に収まりそうやな」と分かっただけで、だいぶ気が楽になりました。数字が見えると、親とお金の話をするハードルも下がります。夏休みの帰省前に、10分だけ路線価図を眺めてみてください。
相続まわりでは、実家の相続登記の義務化(過料10万円)と、子ども名義口座の「名義預金」問題もセットで読まれています。
※本記事は2026年7月時点の制度に基づく一般的な情報です。実際の土地評価は形状・権利関係で大きく変わるため、申告が必要なケースでは税理士等の専門家にご相談ください。