警察庁が7月31日に発表した数字を見ていて、引っかかる部分がありました。
「ニセ警察詐欺」の認知件数は、前の年の同じ時期より296件減っています。なのに、被害額は108億9千万円も増えている。
件数が減っているのに、金額が増える。普通に考えると、おかしな話です。
僕は普段、資材の発注をする仕事をしています。件数と金額のズレを見ると、まず「単価が上がったのでは」と考えてしまう癖があります。今回もその癖で数字を割ってみたら、思っていたより嫌な数字が出てきました。
警察庁が発表した数字
2026年7月31日、警察庁は「令和8年上半期における特殊詐欺の認知・検挙状況等について」を公表しました。
上半期(1月〜6月)の特殊詐欺全体の被害総額は1,816億2千万円。前の年の同じ時期に比べて618億8千万円、率にして51.7%増えています。認知件数は22,031件で、こちらも18.3%増。1日あたりに直すと、10億円が消えている計算になります。
手口別に見ると、被害額が最も大きいのは「SNS型投資詐欺」で797億9千万円(5,893件)。次に大きいのが今回取り上げる「ニセ警察詐欺」で507億9千万円(4,466件)。3番目が「SNS型ロマンス詐欺」で246億6千万円(2,509件)でした。
数字だけ見ると、SNS型投資詐欺の伸びが一番目立ちます。実際、僕も最初はそちらに気を取られていました。
件数は減ったのに、金額が増えている
ところが警察庁の発表をよく見ると、ニセ警察詐欺の欄には他の手口と違う動き方が書いてありました。
認知件数は4,466件で、前年同期より296件少ない。つまり、被害に遭った人の数そのものは減っているんです。
一方で被害額は507億9千万円、前年同期より108億9千万円多い。
件数が減って金額が増えるということは、1件あたりの被害額が上がっているはずです。実際に割り算してみました。
前年同期の被害額は、507.9億円から増加分の108.9億円を引いた399.0億円。件数は4,466件に296件を足した4,762件です。399.0億円 ÷ 4,762件で、1件あたり約838万円。
今回(2026年上半期)は507.9億円 ÷ 4,466件で、1件あたり約1,137万円。
差にすると、1件あたりおよそ299万円、率にして35%ほど増えている計算になります。
被害に遭う人の数自体は減っているのに、一度引っかかった人が失う金額は、前の年よりはっきり大きくなっている。これが今回、僕が一番気になった部分です。
どういう手口なのか
ニセ警察詐欺は、名前のとおり警察官や検察官を名乗って電話をかけてくる手口です。オレオレ詐欺の一種として集計されています。
報じられている手口を整理すると、だいたい次のような流れです。
電話がかかってきて、「あなたの口座が犯罪に使われている」「あなたの名義で詐欺グループの口座が作られている」といった話をされます。
信じてもらうために、ビデオ通話に切り替えて、制服姿を見せてきたり、警察手帳や逮捕状らしきものを画面越しに見せてきたりするケースが確認されています。手が込んだものだと、実際の警察署そっくりの部屋を背景に使うこともあるそうです。
そのうえで「あなたの潔白を証明するために、資産状況を確認する必要がある」という理由をつけて、通帳やキャッシュカードの写真を送らせたり、現金を自宅の前に置かせたり、指定した口座に振り込ませたりする。これが最終的にお金が動く場面です。
被害に遭う人の年齢層は、被害額・認知件数ともに70代が最多だと発表されています。ただ、これは「70代の人だけが対象」という意味ではなく、電話をかける側が高齢者を狙って番号を選んでいる結果だと考えたほうが自然です。
もう1つ、報道を見ていて知らなかったのが、入り口がいきなり警察官ではないケースがあることです。最初は通信会社や宅配業者を名乗る人物から連絡が来て、「あなたの契約が不正に使われている」といった話をされたあと、そのまま「詳しい調査のため」と検察や警察を名乗る別の人物に電話が引き継がれる、という手口も確認されています。
つまり、電話の最初の1本が警察を名乗っていなくても、油断はできないということです。身に覚えのない契約トラブルの連絡から、話がどんどん重い方向に転がっていくようなら、そこで一度立ち止まったほうがいいと思います。
見分け方は、見た目ではなく「お金の話が出たかどうか」
警視庁の公式サイトが挙げているポイントは、意外とシンプルです。
警察官がビデオ通話で取り調べをすることはありません。警察や検察が、電話やビデオ通話で口座のお金を預かったり、現金を自宅前に置かせたりすることもありません。
つまり、制服や警察手帳が本物っぽく見えるかどうかで判断しようとすると、負けます。今の技術なら、映像はいくらでもそれっぽく作れます。
判断材料にすべきなのは、通帳・キャッシュカード・送金・現金という「お金の話」が出てきたかどうか、その一点です。お金の話が出た時点で、その電話は詐欺だと考えて間違いありません。
電話がかかってきたら、その場でやること
もし自分や家族にこの手の電話がかかってきたら、次の3つだけ覚えておけば十分だと思います。
その場で通帳やキャッシュカードの話、送金や現金の話が出たら、理由を聞かずに一度電話を切る。相手の肩書きや話の巧みさに気を取られる必要はありません。
折り返す必要があるときは、相手が言った番号ではなく、自分で調べた警察署の代表番号にかけ直す。「+」から始まる国際電話番号や、SNS経由で連絡してくるのも、正規の警察ではまずあり得ないパターンです。
一人で判断せず、家族や周りの人に一度話す。「誰にも言わないでください」と念を押されたときほど、誰かに話したほうがいいサインだと思ってください。
不審な電話や、実際にお金を要求されたときの相談先は、警察相談専用電話の「#9110」、消費生活に関する相談は消費者ホットラインの「188(いやや)」です。
もし振り込んでしまったあとに気づいた場合は、1分でも早く動くことが大切です。振込先の金融機関のコールセンターに連絡して口座凍結を依頼し、それとあわせて警察にも被害を届け出てください。「振り込め詐欺救済法」という制度があり、犯人の口座に振込直後の資金が残っていれば、被害者に分配金として戻ってくる可能性があります。時間が経つほど、その口座から資金が引き出されてしまう可能性は高くなります。すでにお金を払ってしまった場合でも、諦めずに相談することをおすすめします。
この記事はどんな人に関係あるか
正直に書くと、今この瞬間に電話がかかってきていない人にとって、この記事はただの数字の話です。今日何かを変える必要はありません。すでに家族間で「怪しい電話は一度切る」という共通認識ができている家庭には、この記事は不要だと思います。
一方で、被害に遭う人の年齢層が70代最多だという発表を見て、僕は自分の親のことを考えました。うちの親が同じ電話を受けたら、今の説明を思い出せるだろうか。正直、自信はありません。
自分自身が対象になる可能性は低くても、離れて暮らす親や祖父母がいる人にとっては、他人事ではない数字だと思います。今度実家に電話するときにでも、「警察官を名乗る電話が来たら、その場でお金の話をされたら切っていい」という一点だけ、伝えてみてはどうでしょうか。
本記事は、家計改善を実践する会社員が、自身の経験と警察庁・警視庁の公表情報、報道機関の情報をもとに執筆しています。数字は2026年8月時点のものです。状況は変更される場合があるため、最新情報は警察庁・警視庁の公式サイトをご確認ください。
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