会社員をしながらクラウドソーシングで副業をしている知人が、「納品してから入金まで3ヶ月近く待たされた」とぼやいていたことがあります。その話をしたのが去年のことで、実はその少し前に、こうした支払い遅延を防ぐための法律ができていました。
「フリーランス新法」、正式には「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」が2024年11月1日に施行されています。名前だけ聞くと「本業がフリーランスの人向け」という印象を持つかもしれませんが、会社員が副業で業務委託を受けている場合も対象になり得ます。
施行から1年近くが経ち、公正取引委員会による勧告・指導の実績も積み上がってきました。副業をしている人、これから始めようとしている人が知っておくべきお金のルールを整理します。
フリーランス新法とは何か
この法律は、企業などから仕事を受注する個人事業主やひとり社長を、発注側の優位な立場から守ることを目的にしています。対象となるのは「特定受託事業者」と呼ばれる人たちで、次のいずれかに該当します。
- 個人であって、従業員を使っていない事業者
- 法人であっても、代表者以外に役員がおらず、従業員を使っていない事業者
ポイントは「従業員を使っていない」という条件です。副業として個人で業務委託を受けている会社員も、この条件に当てはまれば保護の対象になります。逆に言うと、発注する側(企業)にとっては、副業ワーカーへの発注であっても、このルールを守る義務が生じるということです。
一番大事な「報酬60日ルール」
この法律の中で、お金に直結する最も重要なルールが報酬の支払期日です。
発注事業者は、フリーランスから成果物の納品や役務の提供を受けた日から起算して、60日以内のできる限り短い期間内に支払期日を定め、その期日までに報酬を支払う義務を負っています。
これまでは「検収後60日」「翌々月末払い」など、実質的に支払いが数ヶ月先になる契約も珍しくありませんでした。この法律のもとでは、そうした長すぎる支払いサイトは原則として認められません。
そのほかの主な義務・禁止行為
報酬の支払期日以外にも、発注事業者には次のような義務・禁止事項が定められています。
- 取引条件の明示義務:発注内容・報酬額・支払期日などを書面またはメール等で明示する(口頭発注だけで済ませるのはNG)
- 受領拒否・報酬減額・返品などの禁止:契約期間が1ヶ月以上の業務委託では、発注側の一方的な都合による受領拒否や報酬減額などが禁止される
- 募集情報の的確な表示:クラウドソーシングサイトなどでの募集内容を正確に表示する
- 育児・介護等への配慮、ハラスメント対策体制の整備:一定の要件を満たす場合に義務付けられる
- 中途解除の事前予告:継続的な契約を打ち切る場合、原則30日前までに予告する
これらのうち、副業ワーカーがまず押さえておきたいのは「取引条件の明示義務」と「報酬60日ルール」の2つです。
実際にどれくらい違反が起きているのか
施行からおよそ11ヶ月の時点で、公正取引委員会などによる勧告・指導は合計445件にのぼっています。勧告(より重い措置)自体もすでに10件出されており、直近では2026年3月31日に、報酬の支払期日に関するルール違反で勧告が行われた事例が報じられています。
勧告・指導の対象となった違反の内訳を見ると、「取引条件の明示義務」違反と「期日における報酬支払義務」違反が大半を占めています。つまり、口頭だけの発注や、支払いの遅延・先延ばしは、実際に取り締まりの対象になっているということです。この1年で、法律が「絵に描いた餅」ではなく、実際に運用され始めていることがうかがえます。
副業ワーカーとして何を確認すればいいか
副業で業務委託を受けている、またはこれから受けようとしている場合、次の点を確認しておくといいと思います。
- 発注元から書面やメールで契約内容(報酬額・支払期日など)が明示されているか。口頭だけの約束は後々のトラブルの元になる
- 契約書や発注メールに記載された支払期日が、納品から60日を大きく超えていないか
- 実際の入金が、契約で定めた期日どおりに行われているか
もし取引条件が曖昧なまま仕事を始めてしまっていたとしても、今からでも書面での確認を求めることはできます。「今さら言いにくい」と感じるかもしれませんが、これは法律で定められた発注側の義務なので、確認すること自体は何もおかしなことではありません。
未払い・遅延に遭ったときの相談先
万一、報酬の未払いや大幅な遅延に遭ってしまった場合は、次のような窓口に相談できます。
- 公正取引委員会・中小企業庁:フリーランス新法違反に関する相談窓口
- 厚生労働省・労働局:ハラスメント関連や一部の労働者性に関わる相談
- フリーランス・トラブル110番:フリーランス向けの無料相談窓口(弁護士による和解あっせんも利用可能)
一人で抱え込んで泣き寝入りするより、まずは事実関係(発注内容・納品日・約束した支払期日)を記録した上で、こうした窓口に相談してみるのが現実的な対応です。
まとめ
- フリーランス新法(2024年11月施行)は、副業で個人事業主として業務委託を受ける会社員も対象になり得る
- 発注側には報酬を60日以内に支払う義務があり、長すぎる支払いサイトは原則NG
- 取引条件の書面明示・受領拒否や報酬減額の禁止など、複数の義務・禁止行為が定められている
- 施行11ヶ月で勧告・指導445件、うち勧告は10件(直近2026年3月)と、実際に運用が始まっている
- 未払い・遅延に遭ったら、フリーランス・トラブル110番などの相談窓口を活用できる
副業を始める・続けるうえで、こうした最低限のルールを知っておくだけで、いざというときの対応がまったく変わってきます。
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本記事は、NISA・家計改善を実践する会社員が、自身の経験と公的機関の情報をもとに執筆しています。
本記事は2026年7月時点の情報に基づいています。フリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)の内容・運用実績は、公正取引委員会等の公表情報によりますが、個別の契約トラブルについては弁護士や公的相談窓口に必ずご確認ください。